バカいってる

これはエポックだ

私の直感

私が最初に好きになった芸能人は「少女時代」だった。

TVに映る日本の芸能界に興味を持つ前に、Youtubeで情報を手に入れる異国のアイドルを愛した。

リアルタイムで活動を追っかけたのは「The Boys」だった。


Girls' Generation 소녀시대 'The Boys' MV (KOR Ver.)

冒頭から1:07まで差し込まれるクリスタルパレス、バラの花束、そして鳩まで飛ぶ。

メンバーもピンヒールを履き、まるで女王のような堂々とした態度で自信というものが溢れたモデルウォーキング

今まで「Oh」(チアリーダー)や「Gee」(ジーンズ)のような統一したユニフォームから脱却し、ホットパンツ、ジーンズ、スカートといった一人に合わせた衣装を着るようになった。(もちろんコンセプトに沿った衣装なので統一感はあるが、ほぼ一緒な衣装から、様々な形の衣装に変化したのはこのコンセプトからなのではないかと思う)

 

また今まで殴りたくなる愛嬌を披露することが多かったサニーが金髪のショートに釣り上げアイラインといったようなイメージチェンジもされた。

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歌詞もとても挑発的でとにかく新鮮だった。なぜなら「私が導いてあげるcome out」なんて歌詞は今まで聞いたことがなかったから。

 

※The Boysは日本語verも出たんですが「ついてきて」とか相手を誘導する語彙が目立ってこういう強気の歌詞は日本語歌詞には合わないなぁと思ってました。

(「九人十色の中毒性」という歌詞もムッチャストレートって思って少し恥ずかしかった思い出が)

전 세계가 너를 주목해     全世界が君に注目してる

Bring the boys out

위풍도 당당하지 뼛속부터 넌  威風も堂々として骨の髄から 君は
원래 멋졌어                       もともとかっこいいのよ

내가 이끌어 즐게 come out    私が導いてあげるcome out

세상 남자들이여 난                 世界の男たちよ 私は
No.1지혜를 주는Athena. Check this out!  No.1知恵を授けるAthena.Check this out

 *1

 

正直なことを言うとこの曲はとても好きだったが、周りの反応に過剰に反応したせいで(たくさんの情報ポータルサイトにアクセスし、ネツジンの反応全てチェックしていた)周りの少女時代の突然のイメチェンに、戸惑った意見や、「メイクが濃すぎる」といった拒否反応で、心を消耗した。

ただ私はこの曲が好きだったし、この曲をきっかけにK-POPのアイドルシーンにズブズブと足を踏み入れていった。


[111129] SNSD The Boys @ The MAMA Awards 2011 Singapore

(当時MAMAが地上波で放送してたのを、母がなぜか録画してくれました。私にとってレジェンドステージです)

 

 

さて大学に入り、日本のアイドルも好きになった。

もともと女性アイドルに対してはあまり免疫がなく48グループも見ていたし(推しは松井玲奈)、乃木坂(生駒里奈と、橋本奈々美)をはじめとした坂道グループももれなくチェックしていた。しかし、強くハマることはなかった。

決定的に日本のアイドルにはまり、いまでもライブに勤しんで行くようになったのはハロプロ、特にアンジュルムだった。

 

人は好きになった理由が気になるらしい。私は何度もK-POPは何度も尋ねられたことがある。その答えに私は決まって「歌がうまくてダンスもうまい」と答えていた。

もちろん好きになった理由は他にもいっぱいあったし、言語化出来ない高揚が私を支配してしまう力があったからでもある。

しかし、他の人に伝えるのにこんなにわかりやすい答えはない。なぜなら日本においてアイドルというのは実力が劣るものという意味が含まれるから。

 

ちなみになんだけれどデジタル大辞泉のアイドルの説明に2015年に実施した「あなたの言葉を辞書に載せよう。2015」キャンペーンでの「アイドル」への投稿から選ばれた優秀作品の記載があったので引用する。ここからもアイドルという定義に世の中にあるアイドルのイメージを端的に表現している。

 

◆昭和では高嶺の花。平成では路傍の石

◆可愛い未熟なもの。(一部抜粋)

だから、歌がうまいから好きと言う理由が通りやすいというのはこのようなイメージがあってこそなのだ。

 

さて、ハロプロに急激にはまるとやはりなんで好きになったかを聞かれる。

その時も対外的にわかりやすいのが

「だってハロプロは歌もダンスもうまいから」という理由だ。

もちろん理由は上記のような理由で対象が日本のアイドルではなく今でいうと秋元康がプロデュースしているグループのイメージに変わっただけだった。

 

でもそんなかんたんな理由じゃない。これも私にとっては言語化するのにはたくさんの時間を擁したし今も確実ではない。ただ少女時代のときと同じように言語化出来ないけれど見たとき生きた意味を感じるものだった。

 

歌がうまいという理由だけで好きになったのではない。と今ははっきりと違うと言える。どんなにうまくても私は「日本一スカートが短いアイドル」と銘打たれた時点で会っていたら、その子たちをまずシャットダウンしてしまったであろう。

 

その当時、私は「少女時代」をはじめとするK-POPのアイドルのかっこいいところがすき、であったり、逆にこういう「The アイドル」というMVや衣装が嫌いと目に見えるわかりやすい部分に好き嫌いを見出してきた。

 

でもずっと私はアイドルという構図にはめられていた、そのおじさん目線のプロデュース方法に対して無意識に拒絶していたのだと思う。その子たちを好きになる前にその構造に入り込まれた状態で、好きなる入り口から締め出されてしまう。

当時は言語化もしていなかったし、そもそもフェミニズムという言葉すら知らない状態であったが、その拒否感はいまでも思い出せる。

 

この長年のK-POPにハマった理由、そしてその後、アンジュルムにハマった理由を言語化できたのは、渡辺ペコさんのエッセイ「推しとフェミニズムと私」を読んだから。

 

最近河出書房新社で出版された雑誌「文藝」 2019年秋季号が大きな話題になったのをご存知だろうか。わたしは全然知らなかったが、本屋でその増補版として単行本化した「完全版 韓国・フェミニズム・日本」

 

完全版 韓国・フェミニズム・日本

完全版 韓国・フェミニズム・日本

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2019/11/29
  • メディア: 単行本
 

という本を見つけ購入した。

1冊1600円と高かったが、購入の決め手となったのが渡辺ペコさんのエッセイだった。

渡辺ペコさんは最近「1122」という公認不倫を題材にした漫画を連載されている。

 

1122(1) (モーニング KC)

1122(1) (モーニング KC)

 

 そのエッセイを一部引用する

90年代に十代を過ごした私にとって永らく『アイドル」とは女の子だったら制服風の衣装を着て”ちょっとエッチな”歌を歌ったり売れっ子のお笑いコンビに(現代の言うところの)セクハラされたりする子たちで(中略)少し後なって理解したけれど、”ちょっとエッチな”歌詞は全て彼女たちより年上のプロデューサーが捜索していたものだった。

その頃に醸成された”あの空気”は、以來ずっと芸能界に限らず日本を覆い続けていたように思う。力を持ったおじさんと無力な女の子の構図。女の子は可愛くて無知で素直で、売れっ子の男性芸能人にいじられてなんぼの空気。流行りは何度か形は変えたけど空気は同質なものだった。(中略)

関係ない自分も画面越しに見かけるだけでしんどかった。

*2

そして渡辺さんは、BTSに沼落ちしたという。詳細はこの本をぜひ読んでほしい。

 

私が少女時代を好きになったのは12歳の頃だった。その当時からこの拒否感を持ち自分の趣味を選択し、そして今になってフェミニズムという学問に出会うことになった。

小さな頃からの違和感は何年かごしにその思いを代弁したエッセイに出会い、言語として自分の中で消化できるようになった。

そのような違和感を感じていたから、フェミニズムに興味を持ったのか、それとも無意識だったが、フェミニズムと触れたことで気づいたのかはわからない。

なんにせよ、私自身の選択が10年後答え合わせができたこと、そして12歳の自分の直感および、そこからずっとその価値基準において自分の好きなアイドルを選んでいたことに対し、自分の直感に対する一種の信頼感を抱いた。

 

さて、最近の私のブログを継続して読んでくださる方は急にフェミニズムに傾倒したという思いを抱く方もいると思う。最近の記事はほとんどフェミニズムに基づく感想が多い。

実際私自身ジェンダーという問題に触れ、考えることが多くなったし、今まで自分が言語化できなかったモヤモヤをフェミニズムという学問領域で多くの人が、言葉によって自分の気持ちを代弁してくれることがとても多かった。

 

全てのアイドルシーンを「フェミニズム」という観点からみるというのは、逆に自分の視野を狭めて、何か大切なものを見落としてしまう怖さも感じている。

しかし私は学問としてフェミニズムに出会い、本当によかったと思っているし、これからも継続して学んでいきたいと思っている。そしてそれを考え、学んでいく上で答えを出していきたいと思う。

そして、これは誰かに影響はされたが誰かに言われて、とか洗脳されてとかではなく自分が受け入れて選択したものなので、胸を張っていきたいと思う。

 

*1:

ameblo.jp

*2:『完全版 韓国・フェミニズム・日本』河出書房新社 2019 p146より

渡辺ペコ「推しとフェミニズムと私」